これもやはり誰にでも当てはまるものではありませんが、多くの人にとっては有効な手段だと私は思います。
理由は3つあります。
- 記憶のルートを増やせる
- 覚えた語源を何度も使い回せる
- 未知の単語の意味を予測できる
それぞれ詳しく説明していきます。
まず第1に、語源を使うことによって単語の意味を思い出すための新たなルートを形成することができます。
語源を覚えるというのは大抵、単語をいくつかの部品に分解してそれぞれの部品の意味を覚えるということにほかなりません。
この部品の意味を組み合わせることによって単語の意味を思い出すというのが、語源を利用した記憶の新しいルート形成になります。
では、どのようなときにこの新しい記憶のルートが役に立つのでしょうか。
例えば、何度訳語を眺めても単語の意味をなかなか覚えられない場合があります。
そんなときには、語源という別の角度からのアプローチをしてみることで、異なる見方ができてその単語を覚えられるかもしれません。
また、一度は覚えた単語も、使わないまま時間がたてば忘れてしまうものです。
そんなときに、単語に対応した訳語を直接思い出せなくても、もし語源を覚えていれば、そこから訳語を間接的に思い出すこともできるのです。
このように、語源によって新たな記憶のルートを作ることには少なくとも2つのメリットがありそうです。
それは「訳語が覚えられないときに代わりにメインのルートになること」と「覚えた訳語を忘れてしまったときに補助するサブのルートになること」です。
どちらも、訳語のルートがうまく機能しないときにその「代わり」になることで記憶を補助してくれるようです。
ここで、1つ例え話をしましょう。
もし、どこか離れた地点に行こうとしたとき、目的地にたどり着くためのルートはたくさん知っていた方がいいでしょう。
1つの道が何らかの理由で通行不可能になってしまったとしても、別のルートを「代わり」として使えば目的地に問題なくたどり着くことができるからです。
まさにそのようなことが、単語記憶にも言えるのです。
目先の手間はたしかに増えてしまうかもしれませんが、長い目で見れば語源を使うメリットがあります。
なかなか訳語を覚えられない単語に対しては、別のアプローチとして語源を利用してみるのもよいでしょう。
また、訳語をひとまずは覚えられた単語も、もうひと手間かけて語源を覚えておくと別のルートが形成されて、より忘れにくいものとなるでしょう。
そして第2に、ひとたび語源を覚えてしまえば、それらの組み合わせを変えたりして何度も使いまわせるということが言えます。
これにより、将来の単語記憶が圧倒的に楽になります。
先ほども述べましたが、語源というのは基本的に単語を構成する部品のようなものです。
訳語の場合は覚えてしまえば基本的にはそれっきりで、まったく意味の異なる他の単語の記憶に役に立つということはまずありません。
これでは、いつまでたっても1つの英単語を覚えるのに必要な労力は変わりません。
新しい単語を覚えようとする度に、毎回毎回同じ労力をかけなければ覚えられないことになります。
これに対して、単語の部品に当たるところの語源を覚えておけば、別の単語を覚えるときに役に立つことがあります。
例えば、graphという単語を見てみましょう。
graphはそのまま「グラフ」という意味ですが、語源としては「書く、描く」という意味をもっています。
たしかに、グラフというのは「描かれたもの」と言うことができますよね。
その他に、同じgraphを語源とする単語には以下のようなものがあります。
・ photograph「写真」= photo「光」+ graph「描く」 (→「光によって描かれたもの」)
・ paragraph「段落」= para「隣に/並んで」+ graph「書く」 (→「並べて書かれたもの」)
・ telegraph「電報」= tele「遠くに」+ graph「書く」 (→「遠くに向けて書かれたもの」)
・ calligraphy「書道」= calli「美」+ graphy「書く」 (→「美しく書かれたもの」)
・ autograph「有名人のサイン」= auto「自分」+ graph「書く」 (→「有名人が自分で書いたもの」)
・ biography「伝記」= bio「生命/人生」+ graphy「書く」 (→「誰かの人生について書かれたもの」)
・ lithography「石版印刷」= litho「石」+ graphy「書く」 (→「石によって書かれたもの」)
・ seismograph「地震計」= seismo「地震」+ graph「描く」 (→「地震を波形として描くもの」)
このように、一度graphの語源としての意味「書く、描く」を覚えてしまえば、graphという語源はそれ以降の語源学習に何度も再利用できるのです。
組み合わせの力というものは想像を絶するもので、なんと14,000語もの英単語がたった34種類の語源の組み合わせによってできているとも言われています。
そう聞くとすごくワクワクしてきませんか?
これが、語源の力なのです。
さらに第3に、語源を使えば未知の単語の意味を予想することもできるようになります。
英語関係の試験の語彙問題などにおいて、知らない単語が出ることはよくあることだと思います。
普通に訳語だけで覚えている場合、ここで打つ手はありません。
考えてもわからないので、せいぜい勘で答えをマークしておくことしかできないでしょう。
しかし、そんなときにも語源の力を借りることができます。
もし出会った未知語が知っている語源に分解できた場合、それらを組み合わせて大まかな意味を予測することができるのです。
ただ、この方法に過度な期待は禁物です。
「豊かな想像力」がないと本当の意味にたどり着くことが困難な単語が多々あるからです。
つまり、毎回のようにうまくいく方法ではないのです。
しかし、訳語だけで英単語を覚えている場合にはまったく使えない方法なので、知っておけば有利になることは間違いありません。
最後の悪あがきやおまけ程度に考えておいてください。
このように、英単語記憶において語源を使うことには極めて大きなメリットがあると言えるでしょう。
しかし、そんな語源にも注意しなければならないことがあります。
それは、どんな単語にも覚えるのに役立つ語源情報があるとは限らないということです。
様々な文献を当たっても、語源に関する情報がまったくないような単語も存在しています。
また、特に基本的な語においてよく見られるのですが、単に発音の変化の歴史をたどるだけになってしまい、記憶の助けにならない語源をもつ単語もたくさんあります。これは、特に2つ以上の部品に分解できない単語に言えます。
それらのような場合は残念ながら、本サイトでも有益な語源情報を提供することができず、語源の欄は空白になっています。
そのときはこだわらず、潔く諦めて他の方法で覚えることにした方がよいでしょう。
最初は大変に思える語源学習ですが、いくつかの語源を覚える頃には語源の十分すぎる恩恵を感じることができるでしょう。
ぜひ一度、語源による英単語学習を試してみてください。