なぜ画像が効果的か?

そもそも、画像を使うことで英単語を効率よく覚えることができるのでしょうか。
究極的には、すべての人に当てはまる絶対的な真理とは言いきれませんが、私は経験的にも大多数の人に当てはまる事実だと信じています。

では、なぜ私はそのように考えているのか。
その理由を2つ挙げたいと思います。

  1. 自分の経験から
  2. 言語哲学的観点から

まず、第1に私はこの事実を身をもって実感したことが何度もあったからです。
かつてアメリカに留学していたことがあったのですが、その際に現地での視覚的情報が英単語習得に大きく寄与したことが多々ありました。
例を挙げればキリがありませんが、ここでは2つ紹介したいと思います。

まず、私がホームステイをしていたときのことです。
その家では朝食に「オートミール(oatmeal)」という、麦の一種であるオート麦を煮て柔らかくしたものに牛乳を加えたおかゆを出していました。
日本ではなかなか馴染みのないもので、言葉で表現してもどういうものかよくわからないと思うので、こちらの写真をご覧ください。
 
 
 
 
 
 
 

これが私が毎日食べていたオートミールです。
どうですか?
やはり言葉で説明されるよりも写真を見た方がイメージしやすく、理解しやすいものですよね。
英単語を習得するときにもこれと同じことが言えます。

オートミールが出てきた初日は今まで見たこともなかったので、ホストマザーに「これは何ですか?」と聞きました。
すると、ホストマザーは「オートミールだよ」と教えてくれました。
おそらく一度では覚えられませんでしたが、毎日食べ続けて存在は嫌というほど記憶に残っていたので、あとはまたホストマザーに「これって何でしたっけ?」と何度も聞いて、「oatmeal」という単語をその「牛乳がゆ」に結びつけました。

オートミールに関しては、毎日毎日見て食べていたという経験によって早く覚えられたのだと思います。
これが、毎日言葉で説明されただけでは、そもそもどういうものかはっきりせず、こんなにも早く覚えることはできなかったのだと思います。
つまり、実際にその実例となるものを見て、単語を覚えようとすることは非常に効率がいいことなのです。

それから、もう1つ例を挙げたいと思います。
私は外国のスーパーマーケットに行くのがとても好きで、アメリカ留学していたときも暇さえあればよくスーパーをウロウロしていました。
スーパーに行くといろんな種類の物が売られています。
そして大抵の場合、値段と一緒にその物の名前が英語で書いてあります。

そう、実はこれを利用してたくさんの物の名前を覚えられるのです。
私はスーパーを片っ端から歩き回って、実物と名前の対応を確認したり、知らない単語を覚えたりしていきました。
訳語ではなく、実物が単語と対応して置かれているので、言葉で説明されるよりもイメージがしやすく、とても記憶に残りやすかったのを覚えています。
とても変わった見方かもしれませんが、スーパーは外国語学習者からすれば「最高の単語帳」なのです。

このように、私はアメリカ留学を通じて英単語を視覚的イメージで覚えることを学びました。
これはなにも、名詞だけに言えることではないと思います。
動詞、形容詞、副詞などでも同様に視覚的情報を使うことによって、それらが簡単に覚えられると思います。

でも、これは一体どうしてなのでしょうか。
私の考えでは、これは母国語を習得する過程と関係があるように思われます。
すなわち、この問いに答えるためには「そもそも母国語を習得するとはどういうことか」を考える必要があります。
これが、画像が英単語習得に役立つということの2つ目の理由にもなってきます。

ここでは、言語哲学(言語について考えること)的に考えてみようと思います。
我々は母国語をいとも容易く習得します。
では、どのようにして母国語は習得されるのでしょうか。
とりわけ、ここでは単語の習得について考えてみましょう。

誤解を恐れず単純化して言えば、単語(一般名詞)というのは概念を指示(意味)するものと言えるでしょう。
概念というのがくせ者なのですが、わかりやすくするために、ここでは簡単に「一般的イメージ」と呼ぶことにしましょう。
例えば、「リンゴ」という単語に対して、みなさんは一般的なリンゴの姿を思い浮かべることができますよね。
その一般的なリンゴが思い浮かべば、「リンゴ」という言葉の意味がわかっていると言えるのではないでしょうか。

すなわち、単語を覚えるということは、
「文字や音としてのその単語」(この場合「リンゴ」)
「その単語が指し示す一般的イメージ」(この場合<リンゴの一般的イメージ>)
の2つを認識し、記憶して、かつこれらを結びつけて記憶しておくということであると思われます。
これが母国語を習得する仕組みと言ってもよいのではないでしょうか。

ただ、一般的には外国語の単語を覚えるときは訳語と対応させて覚えます。
それももちろん悪い方法ではないのですが、それだけではなかなか記憶に定着しません。
そこで、母国語を習得する方法を外国語を習得する際にも使うことを考えます。
母国語もそのようにして習得してきたという事実があるので、言語習得にそれなりの効果はあるように思われます。
その方法が最適ではないとしても、我々がこのやり方に慣れているというのは事実ではないでしょうか。
そう、やはり母国語のように言語を学ぶのが最も自然なのです。

では、外国語を母国語のように習得することを考えましょう。
先ほど述べたように、単語を覚えるということは、単語とそれが意味する一般的イメージを対応させて記憶するということでした。
そのためには、単語が指し示す一般的イメージをまず理解する必要があります。
そしてそのためには、状況のデータが大量に必要になります。

私がホームステイしていたときに食べていたオートミールも、厳密には毎日毎日少しずつ違う風に盛り付けられていたでしょう。
そのような状況でも、厳密には同じではない別々のオートミールの視覚的情報をデータとしてたくさん集められたからこそ、そこに共通するオートミールの一般的イメージを見出すことができたのです。

また、オートミールは新鮮な果物と一緒に出されていました。
それを考えると、もしかしたら「これ何ですか?」「オートミールよ」のやりとりでホストマザーは「牛乳がゆ」と果物をセットにして「オートミール」と呼んでいたのかもしれないと考えることもできるわけです。
こういう場合も、「正確な」一般的イメージを理解するためにはさらなるデータが必要になってきます。
例えば、「今日は果物がないの、オートミールだけで我慢しておいてくれる?」などとホストマザーが言ってきたら、そうか、「オートミール」というのはやはりこの「牛乳がゆ」のことかと自信が増すのです。

また、さらに、ホストマザーとの関わりだけでこの一般的イメージを判断すると、それはあくまでそのホストマザーの一般的イメージをそのまま引き継ぐことになります。
それはそれでよいのですが、万が一、ホストマザーが「オートミール」に対して世間とはかけ離れた一般的イメージをもっていた場合、自分もその餌食になってしまいます。
そこで、通常は特定の人とのやりとりだけでなく、様々な人とのコミュニケーションの中で、自分の一般的イメージを日々確認、修正していくのが「正しく」言語を習得するということなのでしょう。

まとめると、単語が指し示す「正しい」一般的イメージを理解するには、大量の状況データが必要になるのです。
したがって、欲を言えば、現地に出向いて五感を通じて状況のデータを集めるのが一番望ましいのです。
しかし、なかなか留学というのは簡単にできることではありません。
金銭的制約や時間的制約などがあります。

そこで、留学をせずとも、それに匹敵するような勉強が日本にいながらできないかと考えます。
それを叶えてくれるのが、この画像を使った単語記憶法なのです。
技術の進歩のおかげで、今やインターネットを使えばたくさんの情報を得ることができます。
その中で現実的に考えて、手に入る情報は視覚的なものと聴覚的なものと言えるでしょう。
これらの中でも、やはり視覚的な情報はインターネット上において情報量が多いです。

また、我々が知覚している情報の中でも視覚がその大部分を占めているとはよく言われます。
よって、視覚的イメージを使えば、インターネット上で状況のデータを大量に集めることができそうです。
また、これによって、母国語習得のような環境をある程度再現することができるのではないでしょうか。

このように、画像を利用することで母国語習得に近い環境を作ることができます。
母国語習得が最善のやり方である保証はないですが、少なくとも単語習得に効果のある自然なやり方であると思われます。
よって、言語哲学的に見ても、画像を使って英単語を覚えることは効率的である、ないしは効果のある方法であると言えるでしょう。
これが2つ目の理由になります。

私自身、留学に行く前にも、また留学から帰った後でも、そして今でもなおボキャビル(ボキャブラリービルディング:語彙の増強)をしています。
その際にも、やはり画像の力を借りるのですが、画像を使ったときとあえて使わなかったときの記憶の定着ぐあいには大きな差を感じます。
画像を使うと、その英単語と直接、視覚的イメージが結びついて、単語を後で見たときにそのイメージが絵のように頭に浮かんできて、容易に意味を思い出すことができています。

ここまで、いろいろと言葉で説明してきましたが、やはり「百聞は一見にしかず」ということで実際に写真を見ていただくのがよいでしょう。
例えば、上の例の「オートミール(oatmeal)」の画像を見てみましょう。
 
 
 

 
 
これだけの数のオートミールの写真があれば、オートミールの一般的イメージを理解してひとまず覚えるのに十分なデータが集まると言えるのではないでしょうか。
このように、画像を使って英単語を覚える方法は本当に効果的だと思うので、だまされたと思ってぜひ試してみてください。